先日平塚ろう学校へ見学に行ってきた。教員が独自に教材を作ったり、生徒が先生の口元を一生懸命に見て学んでいる姿をみてきた。そこで何点か伺う。
まず、卒業後の進路先について聞きたい。
高等部卒業後の進路先については、本科の卒業生5名の内訳が、進学2名、就職2名、その他1名、専攻科の卒業生9名の内訳が、就職8名、その他1名となっている。
2名の進学先はどこか。
1名は和光大学、1名はろう学校の専攻科である。
4年生の大学に進学したのは、今年が始めてだと聞いているが、基礎学力が大事だと感じた。聴覚障害のある子どもたちに基礎学力をつけさせるために、平塚ろう学校では、どのような努力をしているのか。
聴覚障害児の教育、ろう教育の世界には、「9歳の壁」という言葉があり、この壁を乗り越えることが、ろう教育に携わる多くの教員や研究者にとって重要な課題となっている。
聴覚障害のある子どもは、高等部卒業段階であっても、言語能力、思考力などが、小学校中学年程度の水準を超えることが困難であることが、日本国内にとどまらず、諸外国においても、状況が全く同じであることが関係者の間では知られている。
こうした聴覚障害児の状況を踏まえて、平塚ろう学校では、聴覚障害のある教員を10名配置し、自身の学習の体験を生かした指導を行うことにより、子どもたちが安心して学びながら、学力を高める環境づくりに力を入れている。
また、授業においては、図や写真が豊富な教科書を選定したり、視覚情報を重視した自作の教材を用意するなど、学習内容をできるだけ具体的にイメージできるよう工夫することにより、基礎的な学力の定着に取り組んでいる。
さらに、自作の教材などを、校内サーバーに保存し、それぞれの教室で自由に引き出したり、インターネットなども活用しているが、その際には、各教室に置かれた大型ディスプレイを使用している。
このような取組みに加え、手話による指導力の向上が必要となってくるため、日常の会話に手話を付けたり、学校内外の手話研修会に参加するなど、教員の手話力の向上に努めている。
努力は理解したが、他県の取組と比較してどうなのか。また、参考にしていることはあるか。
私自身もろう学校の校長をしていた経験があり、多くの聾学校を見たが、平塚ろう学校は、県内でも施設設備面で進んでおり、他県と比べても、手話において先進的な取組をしている部分もある。
そうした中で、全国組織である聾教育研究会を通じ、教材開発を含め、日常的に様々な情報交換を行っている。今後ともこうしたことにより一層力を入れていきたい。
平塚ろう学校を見学して、想像と違っていた。子どもたちは、先生の口元を見たり黒板を見たり補助の先生を見たり、大変だと感じた。教材について先生たちはパソコンを利用したりしながら大変努力をしているが、新しい発想がほしいと思っている。
例えば東海大学では、講師がマイクで話した講義がすぐに画面に文字となってあらわれるような新たな情報機器を活用することにより、子どもたちの労力が軽減され、基礎学力の向上に集中できるようになるのではないか。
話し言葉を理解する以前の発達段階から、言葉の獲得の段階がある。例えば、病気が進む、という言い方があるが、これを病気が治る、と理解することがある。そこで、段階を踏んだ丁寧な指導が必要となる。更に、思いやり、責任、協力などの抽象的な言葉になると説明が難しい。
情報伝達の手段として、ノートテイクやパソコンによる要約筆記があるが、こうした際には、わかりにくい言葉を翻訳して伝えている。平塚ろう学校には、10名の聾者の教員がいるが、日常的に職員会議などの際に、実際にこうしたことを行っている。
子どもたちに対してもなんらかの工夫が必要であると考えており、そうした方向に進めていく必要があるという認識をもっている。
最後に、平塚ろう学校では、部活が盛んに行われていると聞いているが、部活の活性化のために、どのような取組を行っているか。
ご指摘のように、平塚ろう学校では、部活が盛んに行われており、例えば、卓球部の男子が平成19年度に関東大会及び全国大会で個人優勝したり、軟式野球部やバレー部でも実績をあげている。
特色のひとつとして、中学部と高等部・本科専攻科の8学年が一緒に活動していることにより、幅広い年齢の集団における人間関係などの学びとなっている、という効果がある。
また、関東を単位とした、聾学校同士の交流が毎年あることにより、ろう者同士の幅広い交友関係ができたり、地域においては、高等学校との交流試合によるつながりから、卒業後も、社会人野球へ参加して活動するなどの例がある。
本県におきましては、部活動の活性化を目的に、2007年度より、かながわ部活ドリームプラン21推進計画を策定しているが、この中で、優れた成果を収めたものに対し、教育長表彰を行う、かながわ部活ドリーム大賞を設けている。
この対象として、今年度より特別支援学校の部活動に関係する団体及び個人を加えてもらったところなので、こうした表彰制度なども活用しながら、部活動を推進し、子ども達がいきいきと学校生活を送り、勉学にも励むことの出来る環境整備に努めていきたい。
平塚ろう学校を見学し、幼稚部に通う子どもの保護者の中には、子どもの送迎のために、朝送ってきて帰りまで別室で待機しているケースがあるが、こうした保護者に、例えば教材作りの協力してもらうなどの工夫をすることが、保護者にとっても有意義であると考えるので、こうした点についても、教育委員会の一層の努力をお願いする。

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